手術での合併症

手術には頻度は非常に低くても合併症がおこる可能性があります。以下に起こりうる合併症を項目別に列挙します。

出血

手術は皮膚を切開するため、出血を起こします。一般的に人工関節の場合、自己血貯血といって、あらかじめ自分の血液をためておくことで手術時の出血に対処します。それでも出血が多く貧血が強い場合には日本赤十字社の検査済みの血液を使用する必要が出てきます。

感染

傷口や血液を介して細菌に感染してしまうことです。我々の施設では、手術の際、人工関節手術用のクリーンルームを完備しており、手術の際には我々自身、宇宙服のような手術着を着用して手術に望むので、感染の危険性はかなり低くなります。しかし完全になくすことは難しいため、もし感染が起こった場合は、手術部位を再び洗浄するような手術が必要になったり、重症化した場合はインプラントを抜去する必要が出てくる場合があります。

もちろん、術後は感染を起こさないため、抗生剤を点滴にて投与し、予防に努めています。

骨折

特に人工股関節の場合、インプラントを骨にしっかりと固定するため、特に高齢で骨粗鬆症のある患者さんでは骨がインプラントに負けて骨折を起こすことがあります。その際にはプレートやワイヤーなどで補強することが必要になる場合があります。

神経・血管障害

手術の際、皮膚を切開するので、周辺部にしびれなどの違和感を感じたり、特殊なケースでは、脚の長さをのばす必要があるため、脚にいく神経や血管も同時に伸び、それによる神経や血管の麻痺症状がおこる可能性があります。多くの場合、自然に軽快してきます。

深部静脈血栓症

皆さんはエコノミークラス症候群をご存知でしょうか?人工関節に限らず、四肢の手術の場合、この”エコノミークラス症候群”と同じことが起こる可能性があります。つまり、脚のどこかに静脈血栓ができて、それが心臓、肺へ流れて大きな血管に詰まってしまい、うまく酸素を体に取り込めなくなる状態が起こりうるということです。重篤な場合、突然死の原因にもなり得ます。

これにならないためには、足先を良く動かすなど、足の血流を良くする努力が必要ですし、当院では、フットポンプ、弾性ストッキングなどを使用し予防に努めています。また、術後出血が収まった時期より、血液がさらさらになる薬剤を投与しています。

大まかに起こりうる合併症は以上です。何か疑問な点などございましたら、主治医の先生へお聞きになってください。一番大事なことは、お互いが十分理解して手術へ望むことです。

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